i. 哲学史のなかの位置
交差点に立つ人
die Kritik ・ a philosophical crossroads
カントの前には、二つの大きな流れがありました。合理論(デカルト、ライプニッツ)――理性だけで世界の真理に届けると考えた人々。経験論(ロック、ヒューム)――知識はすべて経験から来ると考えた人々。両者は長らく対立していました。
カントは、どちらか一方の味方をするのではなく、両方を批判的に受けとめて統合しました。「経験のなかでは合理論は正しい。けれど経験を超えると、理性は転倒する」。これが彼の批判哲学です。
そして驚くべきことに、彼の以後の哲学者たちのほぼ全員が、彼から出発するか、彼に反応するか、彼を乗り越えようとするかのいずれかです。ヘーゲル、ニーチェ、フッサール、ハイデガー、ウィトゲンシュタイン、ロールズ、そしてユク・ホイまで。シリーズで触れてきた哲学者たちが、すべてカントの周辺にいるのが見えるはずです。
ii. 心の二つの無限
二つの無限が、一人の人間のなかで出会う
die zwei Unendlichkeiten ・ awe and reverence
『実践理性批判』の終わりにある、カントのもっとも有名な一節があります。
「二つのものが、つねに新たな、つねに高まりゆく驚嘆と畏敬の念で、心を満たす ―― 我が上なる星空と、我が内なる道徳法則」。
見上げれば、宇宙の圧倒的な広がり。自分は塵にも満たない、と感じる。けれど見つめれば、自分の内に、誰に命じられたわけでもない「こうすべきだ」という声がある。それは星空と同じくらい、揺るがず、深い。
外に向かう無限と、内に向かう無限。カントは、この二つが等しく畏敬に値すると言いました。宇宙の壮大さに圧倒されることと、自分の内なる道徳の声に敬意を払うこと ―― この二つが、一人の人間のなかで出会うとき、そこに人間の尊厳がある。
彼の三つの『批判』全体が、この一文に静かに集まっています。